2023/4~ 3年生の見学等についてはtuat.ac.jp限定サイトをご覧ください。
2023/4/24: 研究内容、よくある問い合わせ(FAQ)を更新しました。
概要
2007年4月に初めて学生を受け入れました。2023年には13名の学生(卒論生4名、博士前期(Master)4名、博士後期(Doctor)5名(うち2名は外国人留学生))が在籍しています。教職員は教員1名、事務補佐員1名、 技術専門員(再雇用)1名です。常に数名のDoctor学生および外国人研究者が在籍することも当研究室の特徴です(その理由)。50名以上の卒業生修了生は多種多様な分野(50以上の組織)にわたって活躍しています。研究成果より学生の成長を心がけ、国際的にも学際的にも活躍できる人材育成のプラットフォーム形成を目指しています。
専門を問わず、幅広い分野の方々を歓迎します。研究室内の多様性を維持するために、ある割合(約20%)で外国人留学生または異分野出身の大学院生を受入れてきました。これまでにMasterコースでは他大学から3名(物理学科、共生創造理工学科、化学工学科)、農工大化学システム工学科の他研究室から2名、物理システム工学科から1名、を受け入れてきました。Doctorコースの入学者には、4名を除いて13名が他大学(国内(応用化学科、地球圏科学科)、マレーシア(食品プロセス工学科)、インドネシア(生物学科等)、台湾(化学工学科)、英国(環境科学科))の大学の卒業生です。
研究室の教育研究の方針は、地球規模の問題に取り組むことを考えます。特に、物質移動に関する社会問題(資源、水、食料、気候、生態系)に対して、学問として工学は何をすべきかを考えます。これまでに以下のアプローチ事例(連携先)で、研究を進めてきました。卒業研究を進めるうちに、化学や物理学だけではなく、生物学等に関する知識も身につきます。
機能材料・食料プロセス技術の開発
- 省資源化を目指した機能性ナノ粒子の電気化学的な合成法(スキンケア製品メーカー, 学生が特許の発明者, 2018~)
- 未利用の農産物が原料となる飼料の設計(生物生産学科, 応用生物科学科, 2020~2030、循環型フードシステム・国家プロジェクト)
- タンパク質の抽出、保存、繊維化(スタートアップ企業, 生命工学科, 2021~)

繊維に固定された酵素が再利用できるか?
植物システム(土壌も含む)の計測・評価に向けて
- 植物に向けた物質導入技術(環境資源科学科, 応用生物科学科, 2008~)
- ナノ粒子と分光法と組み合わせた農薬用センサー(健康食品ベンチャー企業, 2010~2015)
- 土壌とバイオマス中に流れる液体の解析(大手食品飲料企業, 地域生態システム学科, 生体医用システム工学科, 東京大学(農), 2017~2022)

どうしてある葉の部位に粒子沈着が多い?
健康・リスクおよび気象現象の関連
- 病原体を攻める食品(獣医学科および農学部複数研究室) 2021~
- 環境中の微粒子の回収と計測法(環境資源科学科, マーレシア工科大学, 2010~)U/畠山研究室, 2022〜
- 大気環境中の水の回収と制御(大手電機機器企業, U/宮地研究室, 機械システム工学科, 2022~)

対流と重力でエアロゾルを操作できるのか?
卒業研究において「立派な」研究成果を求めるよりは、テーマ設計に至るまでの思考プロセスや実験装置または数値シミュレーションの構築プロセスを重視します。3〜4年生がやりたい(できそうな)研究テーマについて教員と一緒に設計していきます。問題解決能力より課題設定能力が大事と言われる時代において求められる力を身に着けます。
また、マクロ(kmオーダー)とミクロ(μmオーダー)というスケールで物質・エネルギーの輸送とそれらの関連リスク(例えば大気汚染)について少しでも学んで卒業して欲しいです。卒業研究には意味のある失敗(試して・反省)をある程度経験し、その失敗から何が学べるかを考えていく姿勢が大事です。目の前の課題と社会の課題に対する自分の位置づけと将来やるべきことを在学中に考えられる学生であって欲しいです。
FAQ
よくある質問
Q. どうやって研究テーマを決めるのですか?
A) 「〜が好き」「〜をしていると楽しい」「〜を面白いと思う」を入り口にして思い浮かんできた現象または分野からテーマを見つけていくことも良いでしょう。「なぜそのテーマを選んだのか」を考えながら、先行研究(主にWOSデータベース)を調べて、新規性を確認します。1年以内で実施できそうなのか、関連の分析機器の原理も把握します。大学内リソースをいかせる他研究室・他学科と連携するテーマ設定は大歓迎です 。少し珍しい教育方針ですので、下記に過去の先輩たちが作成したスライドも紹介します。3月~4月には先輩が各テーマを説明しますので、それらを参考することもできます。
Q. 他の研究室または農学部と連携すると何が良いのですか?
A) 「アウェイ」環境を味わうためです。他分野の文献を調べたりすると科学技術のグローバル性を知ることになり、ヒントも得ることがよくあります。研究型国立大学の学生としての立ち位置を把握できれば、社会人になった時にも農工大卒業生が有利な立場になります。この仕組の有効性は多くの卒業生たちの活躍からも見られます。
Q. どうして4年生は個人研究型で、チーム研究型ではないのですか?
A) 外部との特定プロジェクトに従事するDoctor生を除いて、学生は各自が独立したテーマに取り組みます。これもアウェイ環境を味わうためです。アウェイに置かれた時が学生も教員も成長します。アウェイを減らせば楽ですが、保守的になり、頭が固くなってしまい、the next-big- ideaが出ません。
過去に4年生が提案したテーマで、大学院生の協力を得て外国の学会で最優秀賞を受賞した例がありました。
研究テーマが多様であるということは、先輩だからと言って知識の蓄積があるわけではないため、研究室内セミナー時に先輩・後輩に関係なく活発な質疑応答が展開されます。質問をする「質問力」が鍛えられますし、質問への対応力も鍛えられます。
Q. 研究室のセミナーというのはどんなものですか?
A) 研究室全員参加で1~2週に1回を行う必須イベントです。約6~7週間に1回は自分の発表になります。一人の持ち時間は60分、発表は15分で、質疑応答は45分です。当研究室の特徴としては、学生は全員質問しますが、教員は質問しません。学生の質問力が鍛えられる仕組みです。8月~9月にはセミナーがありません。
Q. 一人で研究をするのに、4年生は学会発表ができますか?
A) 卒論テーマは一人で行いますが、複数の大学院生チューターがついて、研究内容以外(分析装置の学習等)の指導が受けられます。4年生でも卒業時の3月に学会発表 (リスト中のB4)ができますが、必須ではありません(参考:下図)。過去には英語で学術論文を執筆した4年生もいて、また卒論の中間発表をYoutubeに公開した4年生もいました。
Q. 4年生が卒論で考え出したテーマから学術論文に発展したものがありますか?
A) 多々あります。4年生による世界初の偶然の発見がいくつかあります。例えばロウソク炎に板を導入したところ、水にもアルコールにも分散するスス微粒子の発見があります。それの応用として、サブミクロン粒子を脱離可能とする超音波洗浄法(*2021年)、親水性と疎水性の膜の合成技術法(*2018年)を発表しました。その他には、4年生による対流熱によるエアロゾルの破裂現象の発見があり、それを応用した微粒子と膜の合成法を2017年に発表しました。
Q. 4年生が先輩の手伝いをすることになることがありますか?
A) ありません。逆に大学院生に手伝ってもらうことがよくあります。
Q. コアタイムはありますか?
A) 2020年度以降は無くしました。ただし、卒論が8単位ですので、平日は数時間をかけて研究活動に集中して欲しいです。自宅で文献検索を行った次の日に大学で実験装置を構築する、のような活動パターンも良いでしょう。安全対策で当研究室では17時以降の実験室での活動が禁止されています。つまり、午前中のタイムマネジメントが鍵になります。卒業研究では、成果の量より研究活動プロセスの量(試行経験の量)の方が重要であると考えます。
Q. 英語が苦手ですが、研究室内セミナーでうまくやっていけますか?
A) セミナーでは、教員を除いて学生全員が質問する習慣となっており、外国人留学生と英語で質疑応答時は教員または先輩が通訳します。「英語苦手・・」と言いつつも8ヶ月後には自分のセミナーをFull-Englishで行える4年生も数名いました。セミナー資料は英語で作成しますが、発表は日本語でも良いです。
Q. 卒論研究をしながら、学外の活動が可能でしょうか?
A) ぜひ学外活動も続けて欲しいです。学外活動中にひらめきが出たりします。
Q. 夏休みはどれぐらいありますか?
A) 8月と9月の活動は基本的に個人に任せて、自由な時間です。セミナーも公式meetingもありません。春休みも冬休みもちゃんととって欲しいです。
Q. 大学院進学の場合、別の研究室にいくことができますか?
A) もちろん自由です。これまで別の研究室に2名、とイギリスの大学に1名が進学しました。また、大学院進学せずに、社会人になった卒業生(40名中に6名)もいました。なお、当研究室を進学先として考える場合、志望動機の作文とインタビューによるスクリーニングを実施します。これは外部からの志願者とのフェア性を保つためです。当研究室に残って自動的に進学することにはなりません。
Q. Doctor学生が多いのですが、Master学生にDoctor進学を勧めるのですか?
A) 実は4年生に対しても大学院進学を勧めることはありません。Doctorコースを勧めることもありません。Doctor修了の条件では学術誌論文の掲載と審査工程が複数あり、それなりの覚悟が必要です。Doctorコースに進学が決まった場合、教員が経済的な支援を計画し、スポンサーから(返済の必要のない)奨学金をいただきながら、学生が特定プロジェクト研究を行います。
Q. 研究室に配属した後に海外留学ができますか?
A) できます。卒論生では、2023年度にフランスの大学で3週間(インターンシップ)、1ヶ月で私費でオーストラリアで語学留学したり、夏休み1ヶ月で世界一周旅行をした学生がいました。国の予算を使って、Master学生はマレーシアに数カ月やメキシコに数週間の研修を行ったり、Doctor学生は、米国(1~2週間)やインドネシア(3カ月)の研修を行ったりしました。
Q. 研究テーマと就職先との関係はありますか?
A) ほとんど関係ありません。It’s not what you learn – it’s how you learn 。当研究室の卒業生は様々な分野で幅広く活躍しています。例えば、化学工業(三菱ケミカル等)、建設業(日揮等)、重機製造(IHI等)、半導体製造(スクーリンHD等)、金属製品製造(タンガロイ等)、食料品(伊藤ハム等)、自動車メーカー(トヨタ自動車)、ガス業、水処理(鹿島建設)、印刷(大日本印刷等)、コンサルタント(Accenture)、金融、行政機関(JICA、自衛隊、消防庁、三鷹市)、大学(分析化学、食品工学、生物工学、物理学、化学工学、機械工学、環境科学)です。興味深いデータとして、先輩が就職したところには後輩が行かない傾向となり、個性を重視する当研究室の特徴を表しています。
小金井BASE棟内での実験や数値シミュレーション(大型計算機を現有)だけでなく、必要に応じて大学の(植物育成等)施設や国内外のフィールドでの実験を行うことができます。
是非、実験室にも足を運んでください。皆さんの来室を楽しみにしています。
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(元Science誌編集委員長Dr.B.Albertのメッセージ)「科学者のように考える」という知識と実践をすべての学生に与えることが最優先事項です。科学者には、誠実さや創造性、新しいアイデアを受け入れる姿勢が求められるという共通点があります。科学界は文化を超えて、政治的な隔たりを超えて協力することができるのです。