研究室の学生ガイド Lab Guide for Students (B3向け)

(2026/7/25 更新)

問いを持ち続けられる人へ | We train students to design questions | 私たちは、学生を「技術者・研究者」に育てる前に、「問いを持ち続けられる人」に育てたいと考えています。

本サイトは主に学部生を対象に、本研究室の活動を分かりやすく紹介するために作成しました。卒論生(B4)として知っておきたい実務的な情報を中心に掲載していますが、大学院進学を検討している方にとっても、研究室の教育方針や研究環境を知るための重要な資料となるはずです。This site is intended for undergraduates interested in joining our group; graduate students may also find it useful. 👉> The translated site

「答え」より「問い」を大切にします

研究では、正解のない現象→なぜ?→問い→仮説→試行錯誤、というプロセスが多くあります。研究室で最も重要なのは、「正しい答えを出すこと」ではなく、「面白い問いを見つけること」です。私たちは、学生が (a)良い質問をすること、(b)違和感を大切にすること、(c)予想外の結果を面白がること、を重視しています。

卒業研究で最も大切にすること

  • Failure*を恐れず、安心して未知のテーマに挑戦できる環境を最優先しています
  • 研究成果そのものよりも、テーマ設定や実験計画といった「探求の工程」を重視します
  • 問題解決能力の前提となる「自ら課題を見つけ、設定する力」を育むことを大切にしています

*Failureは「失敗」ではなく、Failureとは、「うまくいかなかった」ではなく、「期待通りに機能しなかった状態」を意味します。研究においては Failure は珍しいことではなく、むしろ次の問いを設計するための情報です。

研究室の概要

当研究室のアプローチは、教員自身の異文化・異分野での経験に深く根ざしています。なぜ当研究室は『迷うこと』を推奨するのか。なぜ「自己決定力」を育むことを最優先するのか。その「背景」をぜひお読みいただくか、音声でお聞きください。➡️ [エッセイ 2024: 多様性と自己決定力](2026: https://researchmap.jp/blogs)➡植物xAIアーティストと対談(2026): @apple / @spotifyresearchmap/blog

当研究室は、物質・流体・熱の移動現象、微粒子工学、化学プロセス、そして生物システムといった異分野を横断する研究を通じて、天然資源、水・食料生産、生態系保全といった地球規模の課題解決に貢献することを目指しています。ミクロな微粒子の挙動から、気候変動を含む地球規模の物質・エネルギー移動まで、多様なスケールでの現象を探求しています。また、生物システムからの着想を工学的に応用するユニークな研究も展開しています。

 

多様性と異分野交流

専門分野を問わず、多様な背景を持つ学生や研究者(約20%が留学生)を積極的に受け入れています。この多文化・多分野な環境が、新しい発想と切磋琢磨の機会を育んでいます。

研究内容の詳細サイト   

⏩ これまでの研究室紹介記事

世界初の研究事例

卒論生(4年生)の発想から生まれた研究論文の事例

卒業研究で身に付くスキル

当研究室の卒業研究では、単に知識を学ぶだけでなく、実社会で役立つ多様なスキルを身につけます。

  • テーマの自律的設計: 自身の問いや興味に基づき、教員との1on1指導のもとで研究テーマを企画・立案する力。
  • 探究的思考力: 機能材料や汚染物質の「移動・輸送」プロセス(大規模空間から微小空間まで)を学び、環境リスクを含む多角的な考察を深める力。
  • 実践的な問題解決: 課題発見・設定から、実験装置の構築(またはシミュレーションの実施)まで、一連の研究プロセスを通じて養う力。
  • 国際的・学際的視野: 多様な研究室メンバーや連携先との交流を通じて磨く、異分野融合的な視点と国際感覚。

安心して挑戦できる雰囲気のもと、「学び」と「成長」を追求できる環境を提供します。

From Nanoparticles to Ecosystems: Transport Phenomena Across Living and Non-Living Systemsナノ粒子から生態系まで ― 物質とエネルギーの移動現象を探究する研究室

当研究室における修士課程(博士前期課程)は、卒業研究の延長ではありません(どちらかというと、博士後期課程の「前半」に近い位置づけです)。修士の2年間は、「自分で研究テーマを設計し、社会に対して説明可能な形にする」ための訓練期間です。

教員がテーマを与えることはありません。与えられるのは「方向」ではなく「問いの立て方」です。修士課程は「自由に研究できる場所」ではなく、「自分で進め続ける責任を負う環境」です。この責任を支えるためには、日々の時間の使い方と生活設計が極めて重要になります。

研究時間と生活設計

当研究室では、最低限の目安として週15時間以上の研究活動を求めています。この時間は、実験、文献調査、思考整理、資料作成のすべてが含まれます。

ただし重要なのは時間そのものではなく、「誰にも言われなくても継続できるか」です。

アルバイトや課外活動は制限することはありません。しかし、それらと研究を両立できるかどうかは各自の責任です。研究がうまく進まない学生の多くは、時間がないのではなく、優先順位が曖昧なのです。

修士課程に進学する場合、自分の生活の中で何を優先するのかを、あらかじめ決めておく必要があります。では、なぜ時間を明確に意識する必要があるのでしょうか?

なぜ「時間制約」が重要なのか

人は、与えられた時間いっぱいまで作業を引き延ばす傾向があります(パーキンソンの法則)。

時間が十分にある状態では、

・判断が遅くなる

・先延ばしが起きる

・思考の密度が下がる

一方で、時間が限られている場合は、

・集中度が上がる

・意思決定が早くなる

・試行錯誤の回転数が増える

結果として、

同じ時間でも「成果の質」が大きく変わります。

当研究室では、あえて時間を細かく区切りながら研究を進めます。研究の質は、能力ではなく「時間の使い方」で決まると考えています。

進捗と継続の考え方

時間を区切る目的は、「継続して前進する状態」をつくるためです。研究は大きく進める必要はありません。しかし、「まったく進まない状態」が続くと、研究はほぼ確実に行き詰まります。

理由はシンプルです。研究は一度止まると、

  • どこまで考えていたのか分からなくなる
  • 何から再開すればよいか分からなくなる
  • 判断の基準が失われる

という状態になり、その結果「次の一歩」が極端に重くなります。当研究室では、週単位で何かしら前進している状態を最低条件としています。

完璧である必要はありません。重要なのは、「思考と行動を止めないこと」です。止まることに慣れてしまうと、2週間 → 1ヶ月 → 2ヶ月と空白が広がり、最終的に研究全体の一貫性が崩れます。

こうした継続的な試行錯誤の積み重ねが、最終的に以下のような研究テーマへと発展していきます。

研究テーマおよびプロジェクト例

当研究室では、天然資源、水、食料の地球上での「移動・循環」とその生態系・気候への影響、そしてその解決策をTUATらしいアプローチで探求します。学生一人ひとりの独自のアイデアを尊重し、教員との1on1指導のもと、自身の関心や強みを活かしたテーマを設計します。農学部や他大学との連携プロジェクトも活発です。

I. 新たなプロセス技術と応用(無機物・有機物)

II. 微粒子工学と移動現象論の応用(植物・農業・環境)

  • 事例(2020卒論):合成粒子の結晶化と溶解特性~材料の機能化 ⏩化学工学会第85年会(大阪)発表
  • 事例(2021卒論):室内の換気設計とエアロゾルの動きの解析~「安心」な室内環境へ
  • 学内プロジェクト:植物に向けた物質導入~新しい農薬・肥料技術(連携:農学部環境資源科学科・応用生物科学科等 / 2008~)公開セミナー事例▶微粒子とトマトの種子発芽・成長
  • 企業とプロジェクト:分光法を組み合わせた環境センサー~残留農薬モニタリング(連携:植物環境系ベンチャー企業 / 2010~2015)
  • 企業とプロジェクト:土壌やバイオマス中の液体の解析(連携:加工食品企業、地域生態システム学科、生体医用システム工学科・岩井研、東京大学(農学) / 2017~2023)公開セミナー▶ 事例1 事例2

III. 大気環境と医療の技術

  • 事例(2023卒論):エアロゾルの水面への沈着~大気汚染と海との関係 ⏩エアロゾル学会
  • 事例2018卒論):帯電液滴を用いたエアロゾルの回収
  • 学内プロジェクト:病原体を攻める食品(連携:獣医学科・水谷研究室 / 2021~)
  • 国際共同プロジェクト:環境中の微粒子の計測と回収法(連携:マレーシア工科大学、+U/畠山研2018~構想中) >> 公開論文
  • 企業共同プロジェクト:大気環境中の水の回収と制御(連携:電機メーカー、U/宮地研 / 2022〜2024(特許出願準備中)

# 多くの公開テーマは、主に博士課程学生が担当しています。卒論題目一覧は学内限定サイトをご覧ください。

▶ 博士論文(公開セミナーを含む) 

 

学生生活・雰囲気

レンゴロ研は2007年に発足しました。現在(2026年4月時点)は12名の学生が在籍しています。内訳は、4年生(卒業研究)4名、博士前期課程(修士課程)5名、博士後期課程3名(うち2名は留学生:セルロース x 熱物性、AI機械学習 x 環境・生物システム)です。教員は教授1名で、事務補佐員1名(女性)、特任助教1名(女性、マレーシア工科大学UTM博士修了)が在籍しています。

当研究室の特徴は、常に複数の博士後期課程学生や外国人研究者が在籍していることです。2026年度には、スタートアップ企業から派遣されている博士研究者(当研究室の修了者)も在籍しています。国内外を問わず活躍できる人材の育成を目指し、学際的な視野を養うことを大切にしています。日常の様子やイベントについては、こちらからもご覧いただけます。

当研究室のスタイルを踏まえると、以下のような志向の方が向いています。

「こんな人におすすめ」 ✅ 自分のアイデアを形にしたい  ✅ Failure*から学べる環境がほしい  ✅ 国際的な視野を広げたい  ✅ 異分野融合に興味がある

「向いていないかもしれない」 ❌ 決められた卒論テーマで研究したい ❌ チーム研究が絶対条件 ❌ 自分でスケジュール管理ができない  ❌ 指示や期限がないと動けない

卒業生の声:

 

卒業生の進路と活躍分野

50名を超える卒業生が、50を超える多様な組織で活躍しています。その分野は多岐にわたります。「何を学ぶか」よりも「どう学ぶか」が、卒業後のキャリア形成において最も重要であると私たちは考えています。

活躍している企業・組織の事例: 三菱ケミカル、ダウ・東レ、日揮、IHI、SCREENHD、タンガロイ、伊藤ハム、トヨタ自動車、鹿島建設、Toppan Edge、Accenture、JICA、防衛省・自衛隊、東京消防庁、三鷹市役所、商社、大学教員(環境化学・食品工学・生物工学・物理学・化学工学・機械工学・環境科学分野)など。

興味深いことに、当研究室では先輩の就職先に後輩が重複して行くことはほとんどなく、学生一人ひとりの個性が反映されています。なお、本研究室では教員が学生の就職活動に直接関与することはほとんどありません。

これまで受け入れた学生の出身分野・大学

  • 国内(修士入学)東京理科大学・物理学、創価大学・共生創造理工学
  • 学内(修士入学):化学システム工学(現:化学物理工学)、物理システム工学(現:生体医用システム工学)
  • 国内(博士入学)室蘭工業大学・応用化学、広島大学・化学工学、福岡大学・地球圏科学、金沢大学・数物科学系(ダブルディグリー)
  • 海外(博士入学)
    • マレーシア・Putra Malaysia大学(食品プロセス工学)、Kebangsaan Malaysia大学(化学工学)
    • インドネシア・バンドン工科大学ITB(化学工学、生命理工学、環境工学)、パジャジャラン大学(物理学)、セプル・ノペンバー工科大学(化学工学)
    • 台湾・台北科技大学(化学工学)
    • イギリス・Sussex大学(環境科学)

 

よくある質問(FAQ)

研究室の配属や日常生活、研究テーマの選び方など、よくある質問をまとめました。

研究内容について

粒子・流体・熱・物質(および情報)の移動現象(Transport Phenomena)を共通言語として、材料、植物、食料、水資源、環境システムを研究する研究室です。微粒子から生態系までを対象とし、工学と生物・環境分野をつなぐことを特徴としています。

専門分野の境界を越えて研究できることです。物理工学(応用物理)、化学工学、材料科学工学、農学、環境科学など、一見異なる分野に見えるテーマも、「物質やエネルギー(および情報)はどのように移動するのか」という共通の視点から研究しています。

A) 必ずしもそうではありません。微粒子(物質)や移動現象(熱・エネルギーと流体(気体・液体)に関するテーマも扱っています。例えば:

  • バイオマス中の液体流れを観察できる光学技術に関する論文(2023A, 2023B)を発表しました。(※旧電子電気工学科(生体医用工学科)岩井研との共同研究)
  • ガスの流れに関する研究では、U科の清水研および日用品メーカーとの共同研究プロジェクト(2023~2026年度)を実施しています。
  • パンデミック時に大学に来られなかった学生は、自宅で室内の空気と熱の流れを数値シミュレーション(Comsol Multiphysics)するテーマに取り組みました。

A. 大丈夫です。物質や流体、熱の移動、生物システム、化学プロセス、食料、水、大気環境、リスクなどに興味や関心があれば十分です。研究室が発表した論文(事例)を事前に読んでおくと、研究室の方向性を把握しやすくなります。


教育方針・考え方

Q. 研究室で最も大切にしていることは何ですか?

A. 問いを設計する力です。本研究室では、”We train students to design questions” を大切にしています。正解を探すことよりも、 良い問いを立てられる人材を育てたいと考えています。

A. 「研究室の最も価値ある成果は卒業生である」と考えています。学生が将来それぞれの場所で活躍することを重視しています。また、便利さだけを追求する技術開発ではなく、人や社会、自然環境との調和に貢献する「適正技術(Appropriate Technology)」の実現も目指しています。

Q. AI時代に大学で学ぶ意味はありますか?

A. あります。むしろ重要性は高まっています。知識へのアクセスは簡単になりましたが、何を信じるか、何を選ぶか、どんな問いを立てるかは、人間が考える必要があります。

Q「計画的な偶発性 (Planned Happenstance)」とは何ですか?

A. 予想外の出来事から学べるよう準備しておくことです。研究でも人生でも、計画通りに進むことは多くありません。大切なのは、 偶然を避けることではなく、偶然から学ぶ力を持つことです。

Q. なぜ4年生は「個人研究型」なのですか?

A) 以下のような探究的なメリットがあると考えています。「問いを託すことは、可能性を信じること」です。

  • 自律性と責任感の育成:「この問いにどう向き合うか?」を自分で考えることで、主体的な姿勢が身につきます。
  • 発想力の広がり:他の学生と異なるテーマに取り組むことで、「自分ならではの視点は何か?」を探る機会となり、創造的な思考が促されます。
  • 相互成長の場:学生が未知の課題に挑戦する姿勢は、教員にとっても刺激となります。「この問いをどう支援できるか?」を考えることで、互いに学び合う関係が築かれます。
  • 信頼関係の構築:テーマ設計を学生自身に任せるのは、「学生のポテンシャルを信じているから」です。これは、教授がテーマを考えたくないからではなく、「学生の挑戦を尊重する姿勢」の表れです。
Q. 研究に「失敗」したらどうなりますか?

A. Failure(”失敗”と異なる意味) は研究の一部です。研究では、思った通りの結果が出ないことが普通です。私たちは Failure を「能力不足」ではなく、「次の問いを考えるための情報」と捉えています。

A. 理由は 2つあります:

1) 実験技術はすぐ廃れるが、「思考力」は一生使えるから 実験機器、分析手法、ソフトウェアなどは10年、20年も経てば大きく変わってしまいます。しかし、「問題設定」「論理的思考」「Failureへの処理」「仮説検証」といったプロセスは、時代が変わっても色あせない、一生モノの普遍的スキルです。

2) 社会に出てから最も差がつくのが「考える力」だから 特に企業や研究機関に出ると、以下のような状況に常に直面します。

  • 不明確な課題(何が問題かすら誰も分かっていない)
  • 誰もやったことのない業務(前例もマニュアルもない)
  • 正解がない状況(複数のリスクの中から自分で判断を下さなければならない)

大学や研究室での試行錯誤は、まさにこうした「正解のない実社会」を生き抜くための、最良のシミュレーション訓練です。

Q. なぜこの研究室は”甘やかさない”方針なのですか?

甘やかすことは優しさではないからです。学生に「自分で判断して動く責任」を背負わせないまま卒業させることは、その学生の未来の可能性を奪うことになりかねません。私たちが目指しているのは、以下のような関わり方です。

  • 精神的に追い詰める「プレッシャー」ではない
  • ルールで縛る「罰則」でもない
  • 研究室の業績のために「働かせる」のでもない

大切なのは、未知の課題を前にしたときの「自分で考え、自発的に前に進める習慣(フォーム)」を、教員と学生が一緒になって作ることです。


テーマ設定・研究の進め方

A. 大きく違います。実験は研究の一部にすぎません。研究とは以下のようなプロセスです:

  1. 問題を定義する(What is the question?)
  2. 曖昧さを扱う(There is no answer key.)
  3. 自分で試行錯誤を進める(Self-driven iteration)
  4. Failureしても続ける(Persistence)
  5. 結果を伝える(Communication)

つまり、研究とは “自分の頭を使って課題を前に進める訓練” です。

Q. 卒論テーマはどのように決めればよいですか?

A) 以下のようなステップが、探究的なテーマ設定に役立ちます。

  • 好奇心: 「なぜ?」「どうして?」と思うことを見つけることが出発点です。
  • 目的: その疑問に対して「何を明らかにしたいのか?」をはっきりさせます。
  • 独自性: 先行研究を調べ、まだ答えられていない部分や新しい切り口を探します。
  • 計画: どのような方法で調べるかを考え、1年以内に完了できるかも確認します。大学の機器や技術も積極的に活用しましょう。
  • 協力の活用: 他の研究室や学科と連携することで、新しい視点や発見が得られることもあります。

当研究室では、卒論生(および修士)が自らテーマを設計し、企画書(Proposal)を作成するという方針を採っています。過去には、卒論生が企画したテーマのために、百万円を超える研究費で装置を購入した例もあります。>> 数年後に別のテーマで別の大学院生がその装置を使用した論文の事例

先輩たちが作成した資料(下図3枚)もぜひ参考にしてください。

Q. 配属直後(4月)から研究テーマが決まっていなくても大丈夫ですか?

A. はい。むしろ最初から明確なテーマを持っている学生は多くありません。本研究室では、テーマを決める前に、何に興味があるか、どんな問題を解決したいか、どんな人生を送りたいか、を考えることも大切にしています。

A.  農工大の特徴を活かしたテーマです。研究室や学内にある設備を活かせるテーマも良いでしょう。

Q. 4年生が卒論で考えたテーマから、学術論文に発展した例はありますか?

A) はい、複数あります。4年生の「自由な発想」が、結果として世界初の発見につながったケースが少なくありません。

事例1:分散可能な煤(すす)材料の発見 (2014年・横手氏): ロウソクの炎から「水・アルコールの両方に分散可能な珍しいすす粒子を偶然発見。その後、超音波洗浄法 (2021)親水/疎水切り替え膜 (2018)、さらに農業(トマト種子の発芽, 2024)へと、10年以上にわたって多様な分野へ研究が波及しました。

事例2:エアロゾル液滴の破裂現象と応用 (2017年・小池氏): 熱対流によって液滴が破裂するユニークな現象を発見し、微粒子と膜をつくる新しい手法を考案。この成果は国際学術誌にInvited Articleとして掲載されました (2017)

Q. 他の研究室または農学部と連携することで、どんなメリットがありますか?

A) 以下のような探究的なメリットが得られます。

  • 新たな視点の獲得:異分野の研究室や農学部との対話を通じて、「この現象を別の角度から見るとどうなるか?」という問いが生まれます。
  • 知の広がり:他分野の文献や研究方法に触れることで、「この技術は自分の研究にどう応用できるか?」と考える機会が増え、科学技術の広範な動向を理解できます。
  • 社会との接点の理解:大学の使命や社会的責任について、「自分の研究は社会にどう貢献できるか?」という問いを持つことで、知的市民としての意識が高まります。
  • 成長の機会:コンフォートゾーンを超えて、「異なる価値観とどう向き合うか」を考えることで、学生と教員が互いに学び合い、EQ(感情知能)を高める貴重な経験になります。

なお、4年生や修士課程大学院生にとって、企業など外部との連携プロジェクトは必須ではありません。しかし、「自分の問いを広げたい」と考える学生には、積極的な参加を歓迎しています。


Q. (修士進学時)専門外のテーマに挑戦できますか?

A. できます。実際、多くの学生が学部時代とは異なる分野に進んでいます。研究室では、微粒子、材料、植物、バイオ、環境など多様なテーマに取り組んでいます。大切なのは、すでに知っていることではなく、 学び続ける姿勢です。


研究室の日常生活

A) 約10週間にわたり、主な活動は文献調査です。 自分の関心に沿った論文を探し、その内容を研究室のセミナーで発表します。論文検索にはWeb of Science(世界で最も信頼性の高いデータベース)を活用します。AIも活用しながら、キーワードの選び方や論文の探し方・読み方を学びます。週1回のペースで教員と議論を重ねながら、文献検索法や内容を深めていきます。また、状況に応じて、3年生の後期の段階から予備的な実験を行うことも可能です。


Q. 研究室セミナーはどんなものですか?

A) 研究室の学生全員が参加する重要な研究活動の場です。約6~7週間に一度、自分の発表の番が回ってきます。持ち時間は60分で、発表は15分、質疑応答45分です。セミナーの特徴は、発表者への質問は教員ではなく学生同士で行われる点にあります。これは、発表内容を問うだけでなく、学生自らが質問を立てる力、つまり課題発見能力を鍛えることを狙っています。教員は質問には加わりませんが、適宜アドバイスを行います。なお、8月と9月はセミナーの休止期間です。▶ セミナーの様子はこちら


Q. 一人で研究をしていても、4年生が学会発表することは可能ですか?

A. はい、可能ですが、ただし、当研究室では、「学会発表・学術論文発表」を卒業研究のゴールとは考えていません。

私たちの目的は、目に見える「業績」をつくることではなく、研究という未知のプロセスを通じて、皆さんの思考や姿勢が根本から変わること(Mind Changing)にあります。

学会発表は必須ではありませんが、「自分の問いを広く共有したい」と考える学生には積極的に機会を提供しています。(実績:国際誌に論文を投稿した卒論生、卒論の中間発表をYouTubeで公開した学生、卒業式直前の3月に学会発表を行った卒論生など> Link

卒業研究は個人テーマですが、、孤立はさせません。複数の先輩・チューターが、セミナー資料の作り方や分析機器の使い方など、技術面でサポートします。

研究型大学における卒業研究の立ち位置 (Concept): AI時代にはIdeaと仮説が最も重要な部分です。

Q. 4年生は先輩の手伝いをすることがありますか?

A) ありません。むしろ大学院生が4年生の手伝いをすることが多いです。


Q. 研究室に決まった「コアタイム」はありますか?

 A) 2020年以降、コアタイムは設けていません。ただし、卒業研究は必須の8単位分に相当するため、平日に最低でも1日3時間、週に15時間以上を研究活動に充てることが求められます(8月〜9月は除く)。文献調査や装置製作などは自宅でも構いません。安全上の理由から、実験室の使用は18時までとしています。研究のリズムを維持できるか、特に午前中の時間をどう活用するかが鍵になります。

当研究室の卒業研究では、研究成果そのものよりも、試行錯誤を重ねる「研究プロセスを重視しています。学生は7〜10日おきに教員へ進捗報告を行います。たとえ実験結果が出ていなくても、自分の工夫や試行錯誤を言語化して報告する力が大切なスキルと考えています。

Q. 卒論研究をしながら、学外の活動が可能でしょうか?

A) もちろん可能です。学外活動(アルバイトやサークルなど)を辞める必要はありません。さまざまな経験をすることが、研究のアイデア出しに役立つこともあります。

Q. 夏休みはちゃんとありますか?

A) はい、しっかりスケジュールを組むことができます。8月と9月は、全体セミナーも毎週の定期ミーティングもすべてお休みになります。

カレンダー上の「週に15時間以上の研究活動時間」というルールもなくなりますので、帰省や旅行、就活などは自分の責任で自由に計画してください。ただし、「時間設計」の項目にもある通り、2ヶ月間完全に思考を止めてしまうと、秋以降に苦労することになります。各自のペースで、主体的に研究や勉強の時間をコントロールする訓練の期間でもあります。

A)  中間発表の日程は、教員から指示されるのではなく、卒論生自身で決めることができます。複数の研究室と合同で行い、2022〜2026年の実績では7月または9月に実施しています。


向き不向き・精神面について

A.「難しい」と感じるのは 正常なことです。これまでの勉強(正解がある世界)とは違い、研究は「誰も正解を知らない世界」だからです。

向き不向きを心配する必要はありません。それよりも大切なのは、以下の4つの習慣です。

  • 小さなステップを積み上げる
  • 毎週1回、手元のメモや図を持って教員室に来ること
  • 予想外のデータ(Failure)が出たときこそ、「面白いデータが取れた」と面白がる
  • 現象を「図や絵」に描いてみる

研究は「筋トレ」と同じです。正しいフォームで継続すれば、誰でも確実に思考体力がつき、伸びていきます。

A.「毎週なにかを進める」ことの徹底です。

  • 1つの実験
  • 1つの図
  • 1ページのメモ
  • 1本の論文を読む

量は大きくなくて構いません。止まると自信がなくなり、さらに止まる、というスパイラルに陥ります。研究は「走り続ける」必要はなく歩き続ければ大丈夫です。


国際交流・海外経験について


Q. 英語が苦手でも、大丈夫ですか?

A)大丈夫です。ただし、翻訳機に頼るだけではなく、自分の言葉で「異なる視点」に触れる姿勢を大切にしています。

現代では機械翻訳が便利ですが、それに頼り切ってしまうと、言葉の背景にある「文化的な視点」や「異なる考え方のプロセス」を取りこぼしてしまいます。当研究室では、翻訳結果の先にある「相手がなぜそのように考えるのか」という多角的な視点を養うことを重視しています。

  • セミナー資料は英語で作製しますが、発表は日本語で構いません。「英語は苦手」と言っていた4年生でも、8ヶ月後には自ら英語でセミナーを行うまでになるケースも珍しくありません。
  • 外国人研究者との対話や質問の際は、教員や先輩が通訳・サポートをします。セミナーでも全員が質問することになりますが、完璧な英語である必要はありません。
  • 言葉の先にあるもの 複数の言語が飛び交う環境に身を置くことで、日本語だけでは得られない「思考の多様性」を体感してほしいと考えています。
Q. なぜ英語を重視するのですか?

A. 世界中の人と議論できるようになるためです。英語そのものが目的ではなく、自分の考えを異なる文化や専門を持つ人に伝える力を身につけることが重要です。

A)現代社会の課題は、一つの専門分野や一つの国だけでは解決できません。当研究室では、多様な背景を持つ学生が協力することで、新しい発想や研究の可能性が生まれると考えています。

また、海外の資源とエネルギーに依存する日本にとって、留学生教育は将来への重要な「投資」でもあります。日本で同じ教育を受け、共通の経験をした学生たちは、卒業後も強固な架け橋となります。彼らが母国に戻った後も日本との絆が途切れることなく、分野や国境を超えた持続的な交流・連携へと発展していくことを期待しています。 >> 教員の公開エッセイ

Q. なぜ研究室で国際交流を重視するのですか?

A. 新しい問いは、多くの場合、自分とは異なる価値観との出会いから生まれるからです。国際交流は、自分自身の前提を問い直す機会でもあります。

Q. 研究室に入ってからも海外に行くことはできますか?

A) はい、可能です。学年に応じて、さまざまな海外経験の機会があります。


Q. なぜ学生を海外へ送りたいのですか?

A. 海外へ行く目的は英語ではありません。自分の常識が世界共通ではないことを知るためです。異なる文化や価値観に触れることで、 新しい問いが生まれます。



大学院進学について(修士・博士)

A. もちろんです。これまで(2025年4月時点)、大学院に進まずに就職した人は、52名中に8名、約15%です。


Q. 大学院進学の場合、他の研究室に行ってもよいですか?

A) もちろん可能です。自分のキャリアに最適な環境を自ら選択することを尊重します。これまでにも、学内の他研究室に進学した学生が数名おり、また、ケニア出身の留学生がイギリスの大学院(修士・博士)へ留学した事例もあります。

  • 当研究室への進学を希望する場合:卒論生であっても、自動的に内部進学できるわけではありません。外部から受験生ととの公平性を保つため、独自の志望理由書の提出と面接(スクリーニング)を実施します。
  • 私たちは、修士課程を「卒論の延長線上にあるもの」とは考えていません。新しいステージとして、高い専門性と「なぜこの研究室でなければならないのか」という明確な意志(ビジョン)を求めます。

Q. 博士学生が多いようですが、修士課程の学生に博士進学を勧めていますか?

A) いいえ、教員から無理に進学を勧めることは一切ありません。進学するかどうかは、学生自身の意志(自己決定)を何よりも尊重しています。

当研究室では、「卒論・修論」を当然のセット(自動的な延長)としては考えていません。「みんなが進学するから」「就活を先延ばしにしたいから」という理由であれば、当研究室の濃密な卒論1年間だけでも、社会で一生使える思考スキルは十分に身につきます。そのため、4年生に対しても大学院進学を無理に促すことはしません。

当研究室の修士課程・博士課程は、あくまで「自ら新しいテーマをデザインし、進め続ける責任を負う場所」です。特に博士号の取得には、国際学術誌への論文受理や複数の厳しい審査が必要であり、求められる自立の次元が異なります。その高いハードルを理解した上で、「他の人にはできない特殊なことを実現したい」と自ら挑戦を選び取る強い意志を、私たちは重視しています。


Q. 博士学生のテーマはどのように決まるのですか?

A. 企業等のスポンサーがある場合、企業側と相談しながらテーマを決めます。公費等の給付型奨学金の場合は学生の希望を優先して、教員がそのテーマに沿って研究環境を調整します。最近の博士論文テーマと各学生の進路は次の通りです。

  • カイコからスタートアップへ:カイコの絹糸腺から非繭シルクを開発 / Yoshida(2025) → 京都のスタートアップ(Pentalink)で活躍(企業がスポンサー)
  • 粒子から植物へ:種子発芽と植物成長における粒子輸送を解明 / Sembada(2024) → インドネシアの国立大学ITB(生命理工学) で教員(国がスポンサー)
  • 流れから光技術へ:液体材料中の熱と流れを可視化 / Pratiwi(2023) → 光センシング企業(Santec, 愛知)(国がスポンサー)
  • 土壌から材料技術へ:植物材料・土壌中の流れと蒸発を研究 / Asanuma(2022) → 金属材料系企業(大阪)(国がスポンサー)
  • エアロゾルから構造材料へ:エアロゾルによる微細構造粒子層を創製 / Faizal(2018) → インドネシアの国立大学 UnPad(物理学)で教員(企業と財団がスポンサー)
  • バイオから電気流体力学へ:電気流体力学を用いた酵素固定化技術を開発 / Saallah(2017) → マレーシアの国立大学 UMS(バイオテク)で教員(企業がスポンサー)
  • (他の博士論文>>/tag/thesis/をご覧ください。)

A. 博士後期課程への進学を決意した学生には、教員が経済的支援(各種奨学金や研究助成金など)の獲得に向けた計画を全面的にサポートします。

これまでに10名以上の博士課程学生(留学生を含む)が、国や企業などのスポンサーから返済不要の給付型奨学金を得て、特定の研究プロジェクトに取り組んできました。現在は、国や大学の制度(JST SPRING等)により、返済不要で月額18万円以上の生活費が支給される制度が整っています。 これにより、博士課程進学における家庭の経済的負担はほぼなくなっています。

当研究室では、学部(卒論)から一貫して在籍し、そのまま博士課程まで進学して学位(博士号)を取得した卒業生が4名います。



就職・進路について

Q. 就活のために卒論生または修士1年生は研究をストップしても問題ないですか?

A: 大きな問題(リスク)があります。長期間(1〜3ヶ月)研究から離れると以下が起こります。

  • 課題を自分で設定できなくなる
  • 何から手をつけてよいかわからなくなる
  • 思考体力が落ちる
  • 卒業論文(卒論・修論)で苦しむ

さらに、企業等に入った後も、

  • 不確実な業務を進められない
  • 期限が守れない
  • 指示待ちになる
  • 技術文書・報告書の質が低い

といった影響が表れます。研究室活動は就活のための負担ではなく、将来のための基礎訓練です。

Q. 研究テーマと就職先は関係はありますか?

  A. ほとんど関係ありません。「何を学ぶか」ではなく「どう学ぶか」が大切です※1
当研究室の卒業生は、化学・素材、プラント建設、重機、半導体、金属、食品、自動車、ガス・水処理、通信、コンサル、金融、行政・公務員、商社、大学など、非常に多様な分野で活躍しています。※2
たとえば(分野と企業・組織例):

興味深いことに、先輩の就職先に後輩が重複して行くことはほとんどなく、学生一人ひとりの個性が反映されています。※3(詳細は学内限定サイトへ)

育てたい人

当研究室の目的は、論文を増やすことでも、特定の業界に人材を供給することでもありません。指導教員が育てたいのは、

  • 変化に適応できる人
  • 自ら問いを立てられる人
  • 未知の状況で考え続けられる人
  • 専門家になっても好奇心を失わない人

です。卒業生の進路が多様なのは、研究テーマではなく、「学び方」を訓練しているからです。

研究室見学や配属を希望される方は、本ページを熟読の上、お問い合わせフォームまたはメール info @ empatLab.net からご連絡ください。

【研究する場所】BASE/AIS棟(2階、3階)で実験や数値シミュレーション(大型計算機あり)を行うほか、必要に応じて大学の施設(植物育成施設など)や国内外の現場で実験も可能です。

当研究室では、以下の多岐にわたる分野で、基礎から応用まで挑戦的な研究に取り組んでいます。これらの例は、過去の卒業論文テーマ(新規性が高いため詳細は⏩学内限定)から抽出した例です。

🌫微粒子・エアロゾル科学

  • エアロゾルの捕集効率とサンプリング手法
  • 微粒子の挙動、操作、制御
  • 表面への付着・脱離現象
  • 室内空気質と換気解析
  • エアロゾルによる微粒子の合成と特性評価

🌱環境工学

  • 水処理・浄化技術
  • 廃棄物のリサイクル・再利用(マスク繊維、バイオマス)
  • マイクロプラスチック対策
  • 土壌改良技術
  • 大気汚染制御システム

🧪材料科学・合成

  • ナノ粒子の合成と物性
  • 結晶成長・溶解メカニズム
  • 沈殿法と特性評価
  • 表面改質技術
  • 機能性材料の開発

🌾農学応用

  • 植物と微粒子の相互作用
  • バイオマス処理・利用
  • 土壌-水-植物システム
  • 食品材料の特性評価
  • 農業廃棄物の有効活用

☀️エネルギー応用

  • 太陽エネルギー利用システム
  • 光触媒応用
  • バイオマス炭化プロセス
  • 蒸発・冷却システム
  • エネルギー貯蔵材料

📏計測技術

  • 水分含有量測定手法
  • 粒子径計測
  • 表面電位測定
  • センサー開発(雨水や農薬など)

youtu.be/jSyFelT5_aw?feature=shared&t=5358 (1:29:30ー1:48:00) 2023年「突撃!研究室」に選ばれました・https://wp.me/p10HOa-5lB(会話の内容)

目次

備考:

  • Failureは「失敗」ではなく、まず「状態を表す言葉」です。Failure は責任を問いません(参考:kaz-ataka.hatenablog.com
  • Result と Outcome の違いは、「結果」と「なりゆき、成果、効果」に近いと考えます。 (参考: esqlabo.com)