(2026/9/9 更新)
We train students to design questions | 私たちは、学生を「技術者・研究者」に育てる前に、「問いを持ち続けられる人」に育てたいと考えています。
このサイトは、主に学部生向けに研究室を紹介するページです。卒論生として知っておきたい実務情報を中心に載せています。大学院進学を考えている人にも役立つ内容です。This site is intended for undergraduates interested in joining our group; graduate students may also find it useful. 👉> The translated site
「答え」より「問い」を大切にします
研究の多くは、「なぜ?」から始まります。現象を見て疑問を持ち、仮説を立てて試す——このくり返しが研究です。当研究室が大切にしているのは、「正解を出す力」より「面白い問いを見つける力」です。そのために、①良い質問をすること、②違和感を見逃さないこと、③予想外の結果を面白がること、の3つを重視しています。
卒業研究で最も大切にすること
- “失敗”(Failure)を恐れず、新しいテーマに挑戦できる環境を大切にしています
- 「結果」より、テーマの決め方や実験計画の立て方といった「過程」を重視します
- 「自分で課題を見つけ、決める力」を育てることを大切にしています
*Failureは「失敗、うまくいかなかった」ではなく、「期待通りに機能しなかった状態」を意味します。研究においては Failure は珍しいことではなく、むしろ次の問いを設計するための情報です。
研究室の概要
当研究室の指導方針は、教員自身が異文化・異分野で経験してきたことがもとになっています。「迷うことを勧める理由」「自己決定力を大切にする理由」について、次のリンクの記事や音声でくわしく紹介しています。➡️ [エッセイ”自己決定力”] ➡️ 2026: note.com「強い人が育つ理由」、➡️ アーティストと対談 @spotify ➡経営者とのインタビュー
当研究室は、物質・流体・熱の移動現象、微粒子工学、化学プロセス、そして生物システムといった異分野を横断する研究を通じて、天然資源、水・食料生産、生態系保全といった地球規模の課題解決に貢献することを目指しています。ミクロな微粒子の挙動から、気候変動を含む地球規模の物質・エネルギー移動まで、多様なスケールでの現象を探求しています。また、生物システムからの着想を工学的に応用するユニークな研究も展開しています。
多様性と異分野交流
専門分野を問わず、多様な背景を持つ学生を受け入れています(在籍者の約20%が留学生、約20%が博士課程学生)。多文化・多分野の環境の中で、新しい発想が生まれ、学生同士が刺激し合っています。
卒業研究で身に付くスキル
当研究室の卒業研究では、単に知識を学ぶだけでなく、実社会で役立つ多様なスキルを身につけます。
- テーマを自分で決める力:自分の興味や疑問をもとに、教員と1対1で相談しながら研究テーマを決める力です
- 探究的思考力: 物質・エネルギーの移動・輸送プロセス(大規模空間から微小空間まで)を学び、環境リスクなどを含めて多角的に考察する力
- 実践的な問題解決: 実験装置の構築やシミュレーションなど、テーマを実行に移すための力
- 国際的・学際的視野: 多様な研究室メンバーなどとの交流を通じて磨く、異分野融合的な視点と国際感覚
安心して挑戦できる雰囲気のもと、「学び」と「成長」を追求できる環境を提供します。

修士課程(博士課程前期)について
当研究室の修士課程は、卒業研究の延長ではありません。むしろ博士課程の「前半」に近い位置づけです。2年間かけて、自分で研究テーマを決め、それを社会に説明できる形にする訓練を行います。
教員がテーマを与えることはありません。教えるのは「テーマ」ではなく「問いの立て方」です。修士課程は自由にできる場所ではなく、自分で進め続ける責任がある場所です。だからこそ、日々の時間の使い方が重要になります。
研究時間と生活設計
研究活動の目安は、週15時間以上です(実験・文献調査・考える時間・資料作成をすべて含みます)。
ただし大事なのは時間の長さより、「誰にも言われなくても続けられるか」です。
アルバイトやサークルは制限しません。両立できるかは自分次第です。研究が進まない学生の多くは、時間がないのではなく、優先順位が決まっていないだけです。
修士課程に進学する場合、自分の生活の中で何を優先するのかを、あらかじめ決めておく必要があります。では、なぜ時間を明確に意識する必要があるのでしょうか?
なぜ「時間制約」が重要なのか
人は、与えられた時間をすべて使い切ってしまう傾向があります(パーキンソンの法則)。
時間が十分あると:
・判断が遅くなる ・先延ばしにしやすい ・考えが浅くなる
時間が限られていると:
・集中しやすい ・決断が早くなる ・試行錯誤の回数が増える
結果として、
同じ時間でも「成果の質」が大きく変わります。
当研究室では、あえて時間を細かく区切りながら研究を進めます。研究の質は、能力ではなく「時間の使い方」で決まると考えています。
進捗と継続の考え方
時間を区切るのは、「少しずつでも前に進む状態」をつくるためです。研究は大きく進める必要はありません。ただし、「まったく進まない状態」が続くと、ほぼ確実に行き詰まります。
理由は単純です。研究を一度止めると、
- どこまで考えたか忘れる
- 何から再開すればいいか分からなくなる
- 判断の基準を見失う
という状態になり、次の一歩がとても重く感じられるようになります。
当研究室では、週単位で何かしら前進している状態を最低条件としています。
完璧である必要はありません。重要なのは、「思考と行動を止めないこと」です。止まることに慣れてしまうと、2週間 → 1ヶ月 → 2ヶ月と空白が広がり、最終的に研究全体の一貫性が崩れます。
こうした継続的な試行錯誤の積み重ねが、最終的に以下のような研究テーマへと発展していきます。
研究テーマおよびプロジェクト例
当研究室では、天然資源、水、食料の地球上での「移動・循環」とその生態系・気候への影響、そしてその解決策をTUATらしいアプローチで探求します。学生一人ひとりの独自のアイデアを尊重し、教員との1on1指導のもと、自身の関心や強みを活かしたテーマを設計します。農学部や他大学との連携プロジェクトも活発です。
I. 新たなプロセス技術と応用(無機物・有機物)
- 事例(2017卒論):噴霧乾燥法による粒子凝集と水中再分散~新しい粒子設計 ▶公開論文
- 事例(2017卒論、2026卒論):茶葉抽出液を用いたナノ粒子の合成
- 特許(学生発明): 省資源型電気化学合成法(連携:日用品メーカー)
- 内閣府プロジェクト(2020-2025)循環型フードシステム(連携:応用生物科学科, 生物生産学科等)
- 特許(学生発明):シルクタンパク質の抽出法 (連携:スタートアップ企業, 農学部・蚕学 研究室、生命工学科 /2021~)公開セミナー▶繭を使わずに絹タンパク質を得る
II. 微粒子工学と移動現象論の応用(植物・農業・環境)
- 事例(2020卒論):粒子の合成時の結晶化制御と溶解特性 ⏩化学工学会第85年会に発表
- 事例(2021卒論):室内の換気設計とエアロゾルの解析
- 学内プロジェクト:植物に向けた物質導入~新しい農薬・肥料技術(連携:環境資源科学科・応用生物科学科等 / 2008~)公開セミナー事例▶微粒子とトマトの種子発芽・成長
- 企業とプロジェクト:分光法を組み合わせた環境センサー~残留農薬モニタリング(連携:植物環境系ベンチャー企業 / 2010~2015)
- 企業とプロジェクト:土壌やバイオマス中の液体の解析(連携:加工食品企業、地域生態システム学科、生体医用システム工学科・岩井研、東京大学(農学) / 2017~2023)公開セミナー▶ 事例1 ▶ 事例2
III. 大気環境と医療の技術
- 事例(2023卒論):エアロゾルの水面への沈着~大気汚染と海との関係 ⏩エアロゾル学会に発表
- 事例(2018卒論):帯電液滴を用いたエアロゾルの回収
- 学内プロジェクト:病原体を攻める食品(連携:獣医学科・水谷研究室 / 2021~)
- 国際共同プロジェクト:環境中の微粒子の計測と回収法(連携:マレーシア工科大学、+U/畠山研2018~構想中) >> 公開論文
- 企業共同プロジェクト:大気環境中の水の回収と制御(連携:電機メーカー、U/宮地研 / 2022〜2024(特許出願準備中)
多くの公開テーマは、主に博士課程学生が担当しています。卒論題目一覧は▶ 学内限定サイトをご覧ください。

学生生活・雰囲気
レンゴロ研は2007年に発足しました。現在(2026年4月時点)は12名の学生が在籍しています。内訳は、4年生(卒業研究)4名、博士前期課程(修士課程)5名、博士後期課程3名(うち2名は留学生:セルロース x 熱物性、AI機械学習 x 環境・生物システム)です。教員は教授1名で、事務補佐員1名(女性)、特任助教1名(女性、マレーシア工科大学UTM博士修了)が在籍しています。
当研究室の特徴は、常に複数の博士後期課程学生や外国人研究者が在籍していることです。2026年度には、スタートアップ企業から派遣されている博士研究者(当研究室の修了者)も在籍しています。国内外を問わず活躍できる人材の育成を目指し、学際的な視野を養うことを大切にしています。日常の様子やイベントについては、こちらからもご覧いただけます。
当研究室に向いている人・向いていないかもしれない人は、以下の通りです。
「こんな人におすすめ」 ✅ 自分のアイデアを形にしたい ✅ Failure*から学べる環境がほしい ✅ 国際的な視野を広げたい ✅ 異分野融合に興味がある
「向いていないかもしれない」 ❌ 決められた卒論テーマで研究したい ❌ チーム研究が絶対条件 ❌ 自分でスケジュール管理ができない ❌ 指示や期限がないと動けない
卒業生の声:
- 「世界で誰も明らかにしていないテーマに挑むスケールの大きさが、この研究の魅力」(在学中のテーマ:すす粒子による熱輸送と熱交換器) ▶ S. K.(日本酸素に就職)
- 「当時は成績が悪くご迷惑をかけましたが、出合ったエアロゾル研究の面白さを現在まで突き詰めることになりました」(在学中のテーマ:微粒子の表面沈着とその検出手法) ▶M.G. (大学准教授・大気環境化学、JST創発研究者)
- 「微粒子挙動と植物を絡めた研究をしていましたが、大学時代に学んだことが思わぬところで役立つ場面が多々ありました」(在学中のテーマ:ポンプを用いない液体供給と植物葉上の粒子輸送) ▶Y. T.(半導体製造メーカーSCREENの技術者)
- 「現在は医薬品・化粧品メーカー向けの水処理設備の設計・施工を担当しています。学生時代は化学工学やエアロゾル計測を学んでいましたが、建築の設計図を見るのも建築現場に入るのも、入社後が初めてでした。」(在学中のテーマ:ガス・粒子転換の計測)▶ Y.T.(鹿島建設・課長、水処理技術)
卒業生の進路と活躍分野
50名を超える卒業生が、50を超える組織で活躍しています。分野もさまざまです。私たちは、「何を学ぶか」より「どう学ぶか」の方が、卒業後のキャリアにとって重要だと考えています。
活躍している企業・組織の事例: 三菱ケミカル、ダウ・東レ、日揮、IHI、SCREEN–HD、タンガロイ、伊藤ハム、トヨタ自動車、鹿島建設、Toppan Edge、Accenture、JICA、防衛省・自衛隊、東京消防庁、三鷹市役所、商社、大学教員(環境化学・食品工学・生物工学・物理学・化学工学・機械工学・環境科学分野)など。
興味深いことに、当研究室では先輩の就職先に後輩が重複して行くことはほとんどなく、学生一人ひとりの個性が反映されています。なお、本研究室では教員が学生の就職活動に直接関与することはほとんどありません。
これまで受け入れた学生の出身分野・大学
- 国内(修士入学):東京理科大学・物理学、創価大学・共生創造理工学
- 学内(修士入学):化学システム工学(現:化学物理工学)、物理システム工学(現:生体医用システム工学)
- 国内(博士入学):室蘭工業大学・応用化学、広島大学・化学工学、福岡大学・地球圏科学、金沢大学・数物科学系(ダブルディグリー)
- 海外(博士入学):
- マレーシア・Putra Malaysia大学(食品プロセス工学)、Kebangsaan Malaysia大学(化学工学)
- インドネシア・バンドン工科大学ITB(化学工学、生命理工学、環境工学)、パジャジャラン大学(物理学)、セプル・ノペンバー工科大学(化学工学)
- 台湾・台北科技大学(化学工学)
- イギリス・Sussex大学(環境科学)
よくある質問(FAQ)
研究室の配属や日常生活、研究テーマの選び方など、よくある質問をまとめました。
研究内容について
Q. 何を研究する研究室ですか?
粒子・流体・熱・物質(および情報)の移動現象(Transport Phenomena)を共通言語として、材料・植物・食料・水資源・環境システムを研究しています。微粒子から生態系まで、工学と生物・環境分野をつなぐことが特徴です。
Q. レンゴロ研究室の最大の特徴は何ですか?
専門分野の枠を越えて研究できることです。物理工学、化学工学、材料科学、農学、環境科学など、一見異なる分野のテーマも、「物質やエネルギー(情報を含む)はどう移動するのか」という共通の視点で研究しています。
Q. 研究テーマは必ず「微粒子」と関係していなければなりませんか?
A) いいえ、必ずしもそうではありません。熱・エネルギー・流体に関するテーマも扱っています。例えば:
- バイオマス中の液体の流れを観察する光学技術の研究(2023A, 2023B、旧電子電気工学科・岩井研との共同研究)
- ガスの流れに関する研究(U科・清水研および日用品メーカーとの共同プロジェクト、2023〜2026年度)
- 自宅でできる数値シミュレーション研究(Comsol Multiphysicsを使用、コロナ禍で登校できなかった学生が取り組んだテーマ)
Q: 先生の授業を履修していないのですが、大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。物質・流体・熱の移動、生物システム、化学プロセス、食料、水、大気環境、リスクなどに興味があれば十分です。事前に研究室の発表論文の事例を読んでおくと、研究室の方向性がつかみやすくなります。
教育方針・考え方
Q. 研究室で最も大切にしていることは何ですか?
A. 問いを立てる力です。”We train students to design questions” を大切にしています。正解を探すことより、良い問いを立てられる人を育てたいと考えています。
Q. 研究室が目指すもの、研究室の成果とは何ですか?
A.「研究室の最も価値ある成果は卒業生である」と考えています。学生が卒業後にそれぞれの場所で活躍することを重視しています。また、便利さだけを追う技術開発ではなく、人や社会、自然環境と調和する「適正技術(Appropriate Technology)」の実現も目指しています。
Q. AI時代に大学で学ぶ意味はありますか?
A. あります。むしろ重要性は高まっています。知識へのアクセスは簡単になりましたが、何を信じるか、何を選ぶか、どんな問いを立てるかは、人間が考える必要があるからです。
Q「計画的な偶発性 (Planned Happenstance)」とは何ですか?
A. 予想外の出来事から学べるよう、準備しておくことです。研究も人生も、計画通りには進みません。大切なのは、偶然を避けることではなく、偶然から学ぶ力を持つことです。
Q. なぜ4年生は「個人研究型」なのですか?
A) 問いを託すことは、可能性を信じること」だからです。理由は4つあります。
- 自律性と責任感が育つ:自分で考えて動く姿勢が身につく
- 発想力が広がる:他の学生と違うテーマに取り組むことで、自分らしい視点を探せる
- 教員も刺激を受ける:未知の課題に挑む姿を見て、教員も一緒に学べる
- 信頼関係が築ける:テーマを任せるのは、学生の力を信じているから
Q. 研究に「失敗」したらどうなりますか?
A. Failure(”失敗”とは違う意味)は研究の一部です。思った通りの結果が出ないのは普通のことです。私たちはFailureを「能力不足」ではなく、「次の問いを考えるための情報」と捉えています。
Q. なぜ研究の「思考(プロセス)」をそこまで重視するのですか?
A. 理由は2つあります。
1) 実験技術はすぐ古くなるが、「思考力」は一生使えるから:実験機器や分析手法、ソフトは10〜20年で大きく変わります。しかし「問題設定」「論理的思考」「失敗への対処」「仮説検証」は、時代が変わっても使える普遍的なスキルです。
2) 社会に出てから最も差がつくのが「考える力」だから:企業や研究機関では、課題が不明確だったり、前例のない仕事だったり、正解がない状況に常に直面します。大学や研究室での試行錯誤は、そうした実社会を生き抜くための最良の練習です。
Q. なぜこの研究室は”甘やかさない”方針なのですか?
甘やかすことは優しさではないからです。「自分で判断して動く責任」を持たせないまま卒業させることは、学生の未来の可能性を奪いかねません。目指しているのは、精神的に追い詰める「プレッシャー」でも、ルールで縛る「罰則」でも、研究室の業績のために「働かせる」ことでもありません。大切なのは、未知の課題を前にしたときに「自分で考え、自発的に前に進める習慣」を、教員と学生が一緒に作ることです。
テーマ設定・研究の進め方
Q. 研究は「実験をやること」だと思っていました。違うのですか?
A. 大きく違います。実験は研究の一部にすぎません。研究とは以下のようなプロセスです:
- 問題を定義する(What is the question?)
- 曖昧さを扱う(There is no answer key.)
- 自分で試行錯誤を進める(Self-driven iteration)
- Failureしても続ける(Persistence)
- 結果を伝える(Communication)
つまり研究とは、「自分の頭を使って課題を前に進める訓練」です。
Q. 卒論テーマはどのように決めればよいですか?
A) 次の5つのステップが役立ちます。
- 好奇心:「なぜ?」「どうして?」と思うことを見つける
- 目的:その疑問で「何を明らかにしたいのか」をはっきりさせる
- 独自性:先行研究を調べ、まだ答えの出ていない部分や新しい切り口を探す
- 計画:どんな方法で調べるか、1年以内に終えられるかを考える(大学の設備も活用する)
- 協力の活用:他の研究室や学科と連携し、新しい視点を得る
当研究室では、卒論生(および修士)が自分でテーマを設計し、企画書(Proposal)を作る方針を採っています。過去には、卒論生が企画したテーマのために百万円を超える研究費で装置を購入した例もあります(数年後に別の大学院生がその装置を使った論文の例)。
先輩たちが作成した資料(下図3枚)も参考にしてください。
Q. 配属直後(4月)から研究テーマが決まっていなくても大丈夫ですか?
A. はい。むしろ、最初から明確なテーマを持っている学生は多くありません。テーマを決める前に、何に興味があるか、どんな問題を解決したいか、どんな人生を送りたいかを考えることも大切にしています。
Q. 理想的にテーマはどのようなものですか?
A. 農工大の特徴を活かせるテーマです。研究室や学内の設備を活用できるテーマも良いでしょう。
Q. 4年生が卒論で考えたテーマから、学術論文に発展した例はありますか?
A) はい、複数あります。4年生の自由な発想が世界初の発見につながった例も少なくありません。
事例1:分散可能な煤(すす)材料の発見(2014年・Yo氏):ロウソクの炎から、水とアルコールの両方に分散できる珍しいすす粒子を偶然発見。その後、超音波洗浄法(2021)、親水/疎水切り替え膜(2018)、さらにトマト種子の発芽研究(2024)へと、10年以上にわたって研究が広がりました。
事例2:エアロゾル液滴の破裂現象と応用(2017年・Ko氏):熱対流で液滴が破裂するユニークな現象を発見し、微粒子と膜を作る新しい手法を考案。国際学術誌にInvited Articleとして掲載されました(2017)。
Q. 他の研究室または農学部と連携することで、どんなメリットがありますか?
A) 主なメリットは4つです。
- 新たな視点:異分野の研究室や農学部との対話から、別の角度で現象を見るきっかけが生まれる
- 知の広がり:他分野の文献や手法に触れることで、自分の研究への応用を考える機会が増える
- 社会との接点:自分の研究が社会にどう貢献できるかを考えるきっかけになる
- 成長の機会:異なる価値観と向き合うことで、学生と教員が互いに学び合える
研究は、結果だけでなく学びそのものでもあります。狭い専門分野に厳密にとどまることは、探索のプロセスを制限してしまいます。
なお、外部連携プロジェクトは4年生・修士課程学生にとって必須ではありませんが、「自分の問いを広げたい」学生には積極的な参加を歓迎します。
Q. (修士進学時)専門外のテーマに挑戦できますか?
A. できます。実際、多くの学生が学部時代とは異なる分野に進んでいます。研究室では微粒子、材料、植物、バイオ、環境など多様なテーマを扱っています。大切なのは、すでに知っていることではなく、学び続ける姿勢です。
研究室の日常生活
Q. 3年生の後期「研究室体験」(必須科目)では何をするのですか?
A) 約10週間、主に文献調査を行います。自分の関心に沿った論文を探し、内容を研究室セミナーで発表します。論文検索にはWeb of Scienceを使い、AIも活用しながらキーワードの選び方や論文の探し方・読み方を学びます。週1回、教員と議論しながら理解を深めます。状況によっては、3年生後期から予備的な実験を始めることもできます。
Q. 研究室セミナーはどんなものですか?
A) 研究室の学生全員が参加する重要な場です。約6〜7週間に一度、自分の発表の番が回ってきます。持ち時間は60分(発表15分、質疑応答45分)です。特徴は、発表者への質問を教員ではなく学生同士で行う点です。これは、学生自身が質問を立てる力=課題発見能力を鍛えるためです。教員は質問には加わらず、必要に応じてアドバイスをします。なお、8月と9月はセミナーを休止します。セミナーの様子はこちら
Q. 一人で研究をしていても、4年生が学会発表することは可能ですか?
A. 可能です。ただし、当研究室では学会発表・論文発表を卒業研究のゴールとは考えていません。目的は目に見える「業績」ではなく、研究という未知のプロセスを通じて、考え方や姿勢が根本から変わること(Mind Changing)です。
学会発表は必須ではありませんが、「自分の問いを広く共有したい」学生には積極的に機会を提供しています(実績:国際誌に論文を投稿した卒論生、YouTubeで中間発表を公開した学生、卒業式直前の3月に学会発表を行った卒論生など。詳しくはこちら)。
卒業研究は個人テーマですが、孤立はしません。複数の先輩・チューターが、セミナー資料の作り方や分析機器の使い方をサポートします。

Q. 4年生は先輩の手伝いをすることがありますか?
A) ありません。むしろ大学院生が4年生の手伝いをすることが多いです。
Q. 研究室に決まった「コアタイム」はありますか?
A) 2020年以降、コアタイムは設けていません。ただし卒業研究は必須の8単位分にあたるため、平日は最低1日3時間、週15時間以上を研究活動に充てることが必要です(8〜9月は除く)。文献調査や装置製作は自宅でも構いません。安全上の理由から、実験室の使用は18時までです。研究のリズムを保てるか、特に午前中をどう使うかが鍵になります。
研究成果そのものより、試行錯誤を重ねる「研究プロセス」を重視しています。学生は7〜10日おきに教員へ進捗を報告します。実験結果が出ていなくても、自分の工夫や試行錯誤を言葉にして報告する力を大切にしています。
Q. 卒論研究をしながら、学外の活動が可能でしょうか?
A) もちろん可能です。アルバイトやサークルを辞める必要はありません。さまざまな経験が研究のアイデア出しに役立つこともあります。
Q. 夏休みはちゃんとありますか?
A) はい、しっかり取れます。8月と9月は全体セミナーも定期ミーティングもすべて休みです。「週15時間以上」というルールもなくなるので、帰省や旅行、就活は自分の責任で自由に計画してください。ただし2ヶ月間完全に思考を止めてしまうと、秋以降に苦労します。自分のペースで研究や勉強の時間をコントロールする訓練期間でもあります。
Q. 卒論の中間発表はいつになりますか?
A) 日程は教員からの指示ではなく、卒論生自身が決めます。複数の研究室と合同で行い、2022〜2026年の実績では7月または9月に実施しています。
向き不向き・精神面について
Q. 研究が難しいと感じるのですが、私は向いていないのでしょうか?
A.「難しい」と感じるのは正常なことです。これまでの勉強(正解がある世界)と違い、研究は「誰も正解を知らない世界」だからです。
向き不向きを心配する必要はありません。大切なのは次の4つの習慣です。
- 小さなステップを積み上げる
- 毎週1回、メモや図を持って教員室に来る
- 予想外のデータ(Failure)が出たときこそ面白がる
- 現象を図や絵に描いてみる
研究活動は「筋トレ」と同じです。正しいフォームで続ければ、誰でも確実に力がつきます。
Q. 研究で挫折しないための一番大事なポイントは何ですか?
A.「毎週なにかを進める」ことです。
- 1つの実験
- 1つの図
- 1ページのメモ
- 1本の論文を読む
量は少なくて構いません。止まると自信がなくなり、さらに止まる——このスパイラルが一番よくありません。研究は走り続ける必要はなく、歩き続ければ大丈夫です。
国際交流・海外経験について
Q. 英語が苦手でも、大丈夫ですか?
A)大丈夫です。ただし、AI等の翻訳機に頼るだけでなく、自分の言葉で「異なる視点」に触れる姿勢を大切にしています。機械翻訳は便利ですが、頼り切ると、言葉の背景にある文化的な視点や考え方のプロセスを取りこぼしてしまいます。
- セミナー資料は英語で作りますが、発表は日本語で構いません。「英語が苦手」と言っていた4年生でも、8ヶ月後には自分で英語セミナーを行うようになる例も珍しくありません。
- 外国人研究者との対話や質問では、教員や先輩が通訳・サポートをします。セミナーでは全員が質問しますが、完璧な英語である必要はありません。
- 複数の言語が飛び交う環境に身を置くことで、日本語だけでは得られない「思考の多様性」を体感してほしいと考えています。
Q. なぜ英語を重視するのですか?
A. 世界中の人と議論できるようになるためです。英語そのものが目的ではなく、自分の考えを異なる文化や専門を持つ人に伝える力を身につけることが重要です。
Q. なぜ留学生が多いのですか?
A)現代社会の課題は、一つの専門分野や一つの国だけでは解決できないからです。多様な背景を持つ学生が協力することで、新しい発想が生まれると考えています。
また、海外の資源とエネルギーに依存する日本にとって、留学生教育は将来への投資でもあります。日本で同じ教育を受け、共通の経験をした学生たちは、卒業後も強い架け橋になります。彼らが母国に戻った後も、分野や国境を超えた交流が続くことを期待しています。教員の公開エッセイ
Q. なぜ研究室で国際交流を重視するのですか?
A. 新しい問いの多くは、自分と異なる価値観との出会いから生まれるからです。国際交流は、自分自身の前提を問い直す機会でもあります。
Q. 研究室に入ってからも海外に行くことはできますか?
A) はい、可能です。学年に応じて、さまざまな海外経験の機会があります。
- 4年生:フランスでのインターンシップ(数週間、公費)、オーストラリアでの語学学校(1ヶ月、私費)、世界一周旅行(1ヶ月、私費)など
- 修士課程:マレーシアの大学(数ヶ月)やメキシコの国立研究所(数週間)での研修を公費で実施した例あり
- 博士課程:国際会議(オーストラリア、中国、韓国、フィリピン、米国、スペイン、フランスなど)での発表(研究室の経費)、米国やマレーシア・インドネシアでの数ヶ月の研修(公費)を行った事例あり(関連記事一覧)
Q. なぜ学生を海外へ送りたいのですか?
A. 目的は英語ではありません。自分の常識が世界共通ではないことを知るためです。異なる文化や価値観に触れることで、新しい問いが生まれます。
大学院進学について(修士・博士)
Q. 大学院進学を希望していませんが、当研究室に配属されることは可能ですか?
A. もちろんです。これまで(2025年4月時点)、大学院に進まずに就職した人は52名中8名、約15%です。
Q. 大学院進学の場合、他の研究室に行ってもよいですか?
A) もちろん可能です。自分のキャリアに最適な環境を自分で選ぶことを尊重します。実際に、学内の他研究室に進学した学生や、ケニア出身の留学生がイギリスの大学院(修士・博士)へ留学した例もあります。
当研究室への進学を希望する場合でも、卒論生が自動的に内部進学できるわけではありません。外部からの受験生との公平性を保つため、志望理由書の提出と面接(スクリーニング)を行います。修士課程は「卒論の延長」ではなく新しいステージです。高い専門性と「なぜこの研究室でなければならないのか」という明確な意志を求めます。
Q. 博士学生が多いようですが、修士課程の学生に博士進学を勧めていますか?
A) いいえ、教員から無理に勧めることは一切ありません。進学するかどうかは、学生自身の意志を何より尊重しています。
「卒論・修論」は自動的なセットとは考えていません。「みんなが進学するから」「就活を先延ばしにしたいから」という理由なら、卒論1年間だけでも、社会で一生使える思考スキルは十分身につきます。修士課程・博士課程は、自分で新しいテーマをデザインし、進め続ける責任を負う場所です。特に博士号取得には国際学術誌への論文受理や厳しい審査が必要で、求められる自立の度合いが違います。その高いハードルを理解した上で挑戦を選ぶ強い意志を重視しています。
Q. 博士学生のテーマはどのように決まるのですか?
A. 企業などの(学生の生活費等の)スポンサーがある場合は、企業側と相談しながらテーマを決めます。公費の給付型奨学金の場合は、学生の希望を優先し、教員がそのテーマに沿って研究環境を整えます。最近の博士論文テーマと進路の例:
- カイコからスタートアップへ:カイコから非繭シルクを開発/N.Y.氏(2025)→ 京都府のシルク材料スタートアップ企業(Pentalink)で技術開発(企業がスポンサー)
- 粒子から植物へ:種子発芽と植物成長における粒子輸送を解明/A.S.氏(2024)→ インドネシア国立大学ITB(生命理工学)で教員(国がスポンサー)
- 流れから光技術へ:液体材料中の熱と流れを可視化/T.P.氏(2023)→ 愛知県の光センシング企業(Santec)で光技術を開発(東大に出向中)(国がスポンサー)
- 土壌から材料技術へ:植物材料・土壌中の流れと蒸発を研究/Y.A.氏(2022)→ 大阪府の金属製品企業(竹中製作所)で材料技術に従事(国がスポンサー)
- エアロゾルから構造材料へ:微細構造粒子層を創製/F.F.氏(2018)→インドネシアの国立大学UnPad(物理学)で教員(企業と財団がスポンサー)
- バイオから電気流体力学へ:電気流体力学を用いた酵素固定化技術を開発/S.S.氏(2017)→マレーシアの国立大学UMS(生命理工学)で教員(企業がスポンサー)
- (他の博士論文はこちら)
Q. 博士課程に進学した場合、経済的な面はどうなりますか?
A. 博士後期課程への進学を決めた学生には、教員が奨学金や研究助成金の獲得計画を全面的にサポートします。これまで10名以上の博士課程学生(留学生を含む)が、国や企業のスポンサーから返済不要の給付型奨学金を得てきました。現在はJST SPRING等の制度により、返済不要で月額18万円前後の生活費が支給される仕組みが整っています。これにより、博士課程進学における家庭の経済的負担はほぼなくなっています。
当研究室では、学部(卒論)から博士課程まで一貫して在籍し、博士号を取得した卒業生が4名います。
就職・進路について
Q. 就活のために卒論生または修士1年生は研究をストップしても問題ないですか?
A: 大きなリスクがあります。長期間(1〜3ヶ月)研究から離れると、次のようなことが起こります。
- 課題を自分で設定できなくなる
- 何から手をつけてよいか分からなくなる
- 思考体力が落ちる
- 卒業論文・修士論文で苦しむ
Q. 研究テーマと就職先は関係はありますか?
A. ほとんど関係ありません。「何を学ぶか」ではなく「どう学ぶか」が大切です(※1)。当研究室の卒業生は、化学・素材、プラント建設、重機、半導体、金属、食品、自動車、水処理、通信、コンサル、金融、行政、商社、大学など、非常に多様な分野で活躍しています(※2)。
例(分野と企業・組織):
- 化学・素材:三菱ケミカル、ダウ・東レ
- プラント・エンジニアリング:日揮
- 重工業・重機:IHI
- 半導体製造装置:SCREENホールディングス
- 金属・切削工具:タンガロイ
- 食品:伊藤ハム
- 自動車:トヨタ自動車
- 建設:鹿島建設
- 情報・通信/デジタル:Toppan Edge
- コンサルティング:Accenture(世界最大級)
- 金融・行政・公共:JICA、自衛隊、消防庁、三鷹市
- 商社:各種商社
- 大学:環境化学・食品工学・生物工学・物理学・化学工学・機械工学・環境工学
先輩の就職先に後輩が重複することはほとんどなく、学生一人ひとりの個性が反映されています(詳細は学内限定サイトへ)。
育てたい人
当研究室の目的は、学術論文を増やすことでも、特定の業界に人材を供給することでもありません。指導教員が育てたいのは、次のような人です。
- 変化に適応できる人
- 自ら問いを立てられる人
- 未知の状況で考え続けられる人
- 専門家になっても好奇心を失わない人
卒業生の進路が多様なのは、研究テーマではなく「学び方」を訓練しているからです。
見学について
研究室見学や配属を希望される方は、本ページを熟読の上、お問い合わせフォームまたはメール info @ empatLab.net からご連絡ください。
【研究する場所】BASE/AIS棟(2階、3階)で実験や数値シミュレーション(大型計算機あり)を行うほか、必要に応じて大学の施設(植物育成施設など)や国内外の現場で実験も可能です。
卒業論文(2017-2025年)から見る研究分野の例
当研究室では、以下の多岐にわたる分野で、基礎から応用まで挑戦的な研究に取り組んでいます。これらの例は、過去の卒業論文テーマ(新規性が高いため詳細は⏩学内限定)から抽出した例です。
🌫️微粒子・エアロゾル科学:
- エアロゾルの捕集効率とサンプリング手法
- 微粒子の挙動、操作、制御
- 表面への付着・脱離現象
- 室内空気質と換気解析
- エアロゾルによる微粒子の合成と特性評価
🌱環境工学:
- 水処理・浄化技術
- 廃棄物のリサイクル・再利用(マスク繊維、バイオマス)
- マイクロプラスチック対策
- 土壌改良技術
- 大気汚染制御システム
🧪材料科学・合成:
- ナノ粒子の合成と物性
- 結晶成長・溶解メカニズム
- 沈殿法と特性評価
- 表面改質技術
- 機能性材料の開発
🌾農学応用:
- 植物と微粒子の相互作用
- バイオマス処理・利用
- 土壌-水-植物システム
- 食品材料の特性評価
- 農業廃棄物の有効活用
☀️エネルギー応用:
- 太陽エネルギー利用システム
- 光触媒応用
- バイオマス炭化プロセス
- 蒸発・冷却システム
- エネルギー貯蔵材料
📏計測技術:
- 水分含有量測定手法
- 粒子径計測
- 表面電位測定
- センサー開発(雨水や農薬など)
卒論題目は新規性が高いため、詳細は▶学内限定サイトをご覧ください。

目次
- 研究室の概要
- 研究室の教育方針
- 研究テーマ・プロジェクト例(2025/7: 公開セミナーを追加)
- 学生生活・雰囲気(+卒業生の声)
- 卒業後の進路
- よくある質問(FAQ)
- 見学について
- 卒業論文に基づく研究分野マップ
- 学内限定情報(2025/7/24に動画を追加)
備考:
- Failureは「失敗」ではなく、まず「状態を表す言葉」です。Failure は責任を問いません(参考:kaz-ataka.hatenablog.com)
- Result と Outcome の違いは、「結果」と「なりゆき、成果、効果」に近いと考えます。 (参考: esqlabo.com)





